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母の手料理

 

 

わたしの母は自他ともに認める料理下手です。

 

幼いころから「お母さん料理下手だからね、ごめんね」と何度か言われたことがありますが

その度わたしは「そんなことないよ、美味しいよ」と言っていました。

別に良い子だったからではなく、子どもの頃って給食と家族でのたまの外食以外、

他人の手料理を食べる機会が少ないため、比較する基準がなかったので本当にそう思っていました。

美味しいというか、そういうもの、という感覚です。

 

母の手料理で特に印象に残っているのは、

味の染みていない大根の煮物(頻出)と、手羽中の唐揚げです。

 

当時は、煮物に味が染みていない、ということは理解できていませんでしたが

当然美味しくはなく、ただ「美味しくない」ではなく

「自分は煮物という食べ物が嫌いだ」という認識でした。

 

唐揚げは何故かいつも手羽中だったので(多分安かったから、しかもしっかり揚げてあるのでかため)、

もも肉の丸ごと食べられる唐揚げがスタンダードだということを大人になるまで知りませんでした。

ちなみにスパゲッティはミートソースとナポリタンしか知らなかったので、

こちらも特に好きではありませんでした。

 

 

ところが大学進学とともに実家を離れて一人暮らしを始め

自分で料理をしたり外食する機会が増え、

久しぶりに帰省し母の手料理を食べた時に気づきました。

「美味しくない…」

 

さすがに母には言えませんでしたが、あまりに衝撃的だったので

同じく大学進学を機に実家を離れた兄にこっそり話したところ

「俺も大学入ったときに同じこと思った」とこれまた衝撃の返答でした。

井の中の蛙というか、ずっと実家にいたら気づかなかったかもしれません。

ただ、鍛えられた?おかげで兄妹全員あまり好き嫌いがなく

だいたいなんでも食べられる大人に育ちました。

 

 

最近は帰省するのが年末のみになっていたため、

お鍋やすき焼きなど、親戚やご近所の人と集まって一緒に食べられる食事ばかりでしたが

先日、予定があり実家に帰省し、久々に母の手料理を食べる機会がありました。

 

母が「今日は唐揚げにしようかな」と言うので手羽中が浮かびましたが、まさかのもも肉でした。

しかも丁寧に二度揚げしていました。

びっくりしたわたしは「昔は手羽中だったよね」と言うと

「それしか知らなかったのよ~、レシピ見て作る余裕もなかったし」と笑いながら話していました。

 

我が家は、わたしがまだ保育園に通っている頃に父が亡くなり、

それまで専業主婦だった母は突如働きながら女手一つで三人の子どもを育てることとなりました。

当時はよく理解できていませんでしたが、普通に考えて

ゆっくりレシピを見てごはんを作る余裕なんてなかったのだと思います。

煮物に味を染み込ませてる時間なんてなかったんでしょう。多分。

 

(専業主婦時代も料理下手だったのでは?とか

子どもたちも協力してごはん作るなりしろよ、とかツッコミどころは色々とありますが、

そのあたりはスルーして良い話としておいてください)

 

 

丁寧に二度揚げされたもも肉の唐揚げはとても美味しかったです。

70歳手前になってもこれまでやってきたことを見直して成長できるんだなと、

わが親ながら何だか少し感動してしまいました。

いまのところ母の手料理の中で好きなもの第一位は唐揚げです。

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