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Mさんを偲ぶ

昨年末に、私の前職の幹部だったMさんが亡くなられました。

Mさんは、まだ70代半ばだったので、訃報を聞いた時には驚きました。

 

私が若手のメンバー職の頃に、Mさんは部長から取締役になっていたので、

私がMさんの直属の部下になったことはありません。

私の上司がいて、更にその上司がおり、更にその上司がMさん、という関係でした。

 

なので、私が直接的にMさんのお仕事ぶりを拝見したことはほぼないのですが、

私はもちろん、私の上司たちにとっても「怖い人」であり「すごい人」「器の大きな人」という

認識を持たれた方であり、いわゆる「大御所」的な方でした。

 

そんな大御所のMさんですが、何故か私の事を気にかけてくれて、

よく飲みに連れて行ってくれました。

なので、私のMさんとの多くの思い出は、「仕事場でのMさん」ではなく、

「飲み屋でご一緒させてもらうMさん」です。

 

但し、Mさんとの飲み会は、常にMさんの都合で決まっていました。

何月何日に飲みに行くぞ、と事前に決めているわけではなく、

私がいる営業所に、夕方又は夜にMさんが現れたら、

「あー今日はMさんと飲みに行くんだな」と理解するというか。

私の意思には一切関係のない、そんな飲み会でした。

 

一度、私が夜の予定がある日にMさんが営業所に来られたので

「Mさん、今日は私予定があるんです」と言って断ろうとしたら

「ふざけんな。そっちを断れ」と言われて、泣く泣く元の予定を断ったこともありました。

 

あまりにも理不尽ですが、その理不尽さも含めてすべてを納得させてしまう、

そんな不思議な魅力をお持ちの方でした。

 

私にとってのMさんは、当時の皆さんの噂通り「怖い方」で「厳しい方」でもありましたが、

同時に「優しい方」であり「とても勉強になる」方でもありました。

 

当時の私は若くて生意気でした。

 

「あのマネジャーはイマイチだ」とか「会社の、この方針はおかしいのでは?」などなど。

会社を代表すると言っても過言ではない取締役のMさんと、

マンツーマンもしくは小人数で話をできる、ラッキーな機会を得ていた私は、

仕事に関する熱い思いを、でも今考えると思慮の浅い考えを、

飲みに誘われる度にMさんにぶつけていました。

 

Mさんは、そんな私の話を鬱陶しがらずに聞いてくれて、

私に様々な考え方を教えてくれました。

時にはぼろくそに、本当にぼろくそに「お前の考えは浅い」とか言われながらでしたが。

 

そんなMさんとの日々が、

20代半ばだった私のその後を形成するうえで大きな影響を与えたのは間違いありません。

 

Mさんには、様々な事を教わりました。

本当にそのひとつひとつが勉強になったのですが、要約すると以下のような内容です。

 

「目の前の現象だけを見るのではなく、その奥にある本質は何か?を考えろ」とか、

「正直に生きろ」とか。

「おべんちゃらを言う大人になるな」とか、

「自分の業績を自慢気に言う奴を信用するな」とか、

「本当にできる奴かどうかは目を見ればわかる」とか、

「勝ちたいなら負け方も覚えろ」とか、

「そもそもすべての勝負に勝つ必要があるのかも考えろ」とか、

「細かい枝葉にこだわるな、大事なのは幹だ」とか、

「ただ、細かい枝葉の様子もきちんと観察できるような大人になれ」とか。

 

中でも、一番私の心に刺さっているのは

「長期的視点に立ったうえで、目先の業績にこだわる」という言葉です。

 

何のために売上を上げるのか?

何のために仕事をするのか?

何も考えずに、目の前の業績だけにこだわってしまうと、

大事な物を忘れてしまうかもしれない。売上さえあげていれば良い、

という安易な方向に行ってしまうかもしれない。

長期的に目指すべき目標を明確にし、その方向に進みながら、

その目指すべき目標のために直近の業績にこだわる。

それは自分が決めた目標に向けての一歩なのだ、という教えは、

私の中で生き続けています。

実践ができているかどうかは別にして、そうありたいとは考えています。

 

私に、大きな大きな影響を与えてくれたMさん。

 

そんなMさんに、もう会えないと思うと寂しいです。

当時より、少しだけ大人になった今の私を見たら、

Mさんは何て言うのか。何を思うのか。

 

「お前、調子に乗ってんじゃねーぞ」とか言ってきそうです。

 

あー、Mさんともう一回話をしたい。

Mさんにもう一回怒られたい。

 

その願いが、叶わない事となってしまって、とても悲しいです。

 

 

余談ですが、先日、東京で「Mさんを偲ぶ会」が催され、出席してきました。

出席者は70名程。

そのほとんどが私の先輩や元上司の方々でした(私はほぼ一番年下でした)。

 

案内状に「平服でお越しください」との記載があったので、

Tシャツで会に出席したところ、その、元上司たちに

「お前はバカなのか」

「平服の意味も知らんのか」

「お前だけバーベキューに来たのか?」と怒られ、

頭を叩かれ、笑われ、冷やかされ、散々でした。

 

ほとんどの方が、もう何年も、人によっては十年以上も会っていない元上司の方々でしたが、

久しぶりに会った瞬間に昔の関係に戻れるのは、何か不思議です。

十年ぶりに会って、第一声が「お前はバカなのか」って。

 

Mさんにはもう怒られないけど、Mさんの部下だった、

私の元上司たちから怒られるという、妙な形で夢が叶ったようで。

少しだけ嬉しかったです。

これもまた、Mさんのおかげですね。

 

 

Mさん、本当にありがとうございました。

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